塩狩峠を読んで考えた4つのこと

 

f:id:Eihire:20190323154201j:plain

塩狩峠 三浦綾子 新潮文庫 1973年

結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた......。
明治末年、北海道旭川塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。

引用元:塩狩峠 裏表紙

 

こんにちはー

今回は三浦綾子塩狩峠です~。結構有名なので知ってる人も多いんじゃないでしょうか。僕は小さいころに寝る前、母親に本を読んでもらっていたので、そこで知っていました。当時は小さかったので、自分の身を犠牲にして列車を止めるお話、くらいしか覚えてなかったけど、たまたま図書館でふと見かけて読んでみると、面白くて寝不足になって卒論執筆に支障が出ました(笑)同時にかな~り奥深い小説だったので、多くのメッセージの中で自分が感じられたことを書いていきたいと思います。

 

目次

 

この記事のまとめ

内容を簡単に言えば、自分の命を犠牲にして、列車を止めるお話。

でも、実はその話は最後だけで、大半は主人公、信夫の成長の物語であり、どう生きるか、良く生きるとは、生と死、差別、格差など重く、深いテーマが散りばめられていて、人によって感じる所が違う、かな~りな良書でした。

 

読んでみての感想

僕は今までは、小説とか読んで何か実利あるのかなーと疑問に思ってたので、話題になってるビジネス書とか自己啓発系とかを優先して読んできました。でもその考えを一変させてくれたのが、この小説!

「小説を読むことで他人の考えを理解できるようになる」

というニュアンスの言葉がこの小説の中にも出てくるんですが、なるほど~と妙に納得してしまいました。なら、小説ってめっちゃ素晴らしいやんと。

その数ある小説の中でも、名著と呼ばれる本達は込められてるテーマの重み、深さと数がすごい。そのテーマ達が読者に無限に思考の余地を与え、読んだ後長い間、頭から離れなくなってしまう。

今回、この塩狩峠という名著から自分が感じ取れた4つのテーマはこんな感じでした。

 

1.生と死

この小説にはよく、“死”が登場します。また、お前さんかい!ってレベルで出きます(笑)。時代が明治なので医療も発達しておらず、結核でかなりたくさんの人が死んでいた時代ですね。その死を経験しながら、主人公の信夫は強く生きようと成長していきます。
月並ですが、人間は死を意識して初めて生きられるらしいですね。実際、僕らみたいな二十代だとまだあまり老いを感じないし、普段から死を考えていないって意味で、ほとんどの人が、無限に生きるかのように生きています。まさに、ゴールのないマラソンを走っているように。反対に、起業家とか有名な方々(ホリエモンとか前田裕二氏とか)は独自の死生観を持っていることで有名です。それを踏まえると、僕も早く生き始めたいな~と思ったので、なんかやってみましょうかな。

 

2.よく生きるとは

この小説の中での僕の1番好きなキャラクターは、信夫じゃなくて、信夫のお父さんです笑。
明治の世、色濃く残る身分社会にあぐらをかくことなく、近所の町人の子、ヤソ(キリスト教信者)と蔑まれる妻の菊、息子の信夫、母、誰にでも平等に接し、優しく強い人柄に惹かれましたね~。自分の信条を貫き、高潔に生きる登場人物を鏡に、自分の人との接し方を省みました😢。
また、よく福沢諭吉パイセンの言葉を引用してたり、本を読んでいる描写が多いです。自分がライクの方で好きになる人は、本を読んでる(大人になっても何かを学ぼうとしている)人が多いなという共通点を探すヒントにもなりました。

 

3.キリスト教について

作者の三浦綾子氏がキリスト教信者であるので、この小説を横断する大きなテーマとなっています。実を言うと、僕は今まで宗教に対してあまり関心がありませんでした。

仏教も形骸化してるから日常的に意識しないし、科学が進歩して色々と説明できるようになった現代においては、もういらんくね?と思っていたからです。(生意気やな)

しかし、作中の登場人物達が、聖書の教えを日常的に意識し、行動の指針として、よりよく生きようと努めているのを見ると、これこそ現代に必要なものではないかと思ってしまいました。近頃、倫理観の欠如しまくっているバカッターさん達によるバイトテロ、幼児虐待などの問題が頻発しているのを見て、人々はよく生きるための心の拠り所、行動指針を手放している気がするんです。(幼児虐待は倫理観の欠如だけの問題ではないけども)変化が大きく、価値観が多様化する現代において、指針として宗教は、個人がよく生きるために必要なんじゃないかと思わずにはいられなかったです。

4.幸せとは

小説の時代は明治であり、宗教、病気に対する差別や身分制度が色濃く残っており、結婚もお見合いです。その様な制約の中で、親族の死で10代前半から一家の大黒柱として働かなければならない人物や、病気に苦しむ人物、宗教による差別に苦しむ人物が登場します。どうしようもない運命に抗いながらも幸せに生きようと、命を燃やす登場人物達をみて、現代における自分にとっての幸せとは果たしてなんなんだろうなと考えさせられました。うーん、哲学的。

という風にまとめてきたわけですが、こんな拙い言葉ではマジで全体分の5厘も伝えきれてないです。(因みにどうでも良いですが、五厘とは野球部が坊主にする際の最も短い長さとされる)なので、ぜひ手に取って欲しいし、もっと文章力あげて伝えたいなと思いました。

 

次回予告

次は、塩狩峠と一緒に借りた『ルポ 貧困女子』のブックログ書きます。賃金だけじゃないところでも男女間格差依然としてありますからね。知っている、知らないでは大きな差になるんじゃないかと思います。

今回も、最後まで読んできただきありがとうございました😊

 

p.s.先日仙台のメディアテークに返しておいたので、借りられますよ!笑